2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

信濃追分と福永武彦夫妻のこと

紫のぼかしに短冊を散らし、物憂い横顔の婦人を配した七夕の絵葉書。裏をかえすと、旧字旧仮名の見馴れぬ文字が綴られている。差出人の名前を見て私は驚いた。それが福永武彦先生にはじめて戴いた夢二の絵葉書だった。そのとき、先生の余命があと四年などと…

本の装い、商品としての本

*本の装い、商品としての本 これまでに何冊の本を装丁したか、記録もなく、すべてを所蔵してもいないので、書名を覚えていない初期の本はどれだけあるか分らなくなっている。 最初にきちんと印刷して造本をしたのが、学生時代の友人の詩集『海の色』だった…

個人誌「邯鄲夢」と久世光彦さんのこと 

箱のなかに箱があり、それを開けるとまた箱がある。開けても開けても箱があり、少々不安になった頃、ようやく小さな本が顔を出す。このマトリョーシカのような重ね箱のイメージは、絵のなかの絵、そのなかの絵、と限りなく小さくなってゆきながら果てしなく…

日本女子大「詩と童話まつり」と諏訪優さんのこと

目白の東京カテドラル聖マリア大聖堂の近くの日本女子大学のキャンパスで、「詩と童話まつり」が開かれていた時期がある。日本女子大学に児童文学究室があった頃で、「目白児童文学」の姉妹誌として、同人誌「海賊」が発行されていた。アドバイザーに山室静…