6月25日刊行『本の夢 小さな夢の本』

 この本は、少女時代に作っていた「夢の莟ノオト」が開花したものです。
はじめに詩と古典のことばが降りてきて、そこから物語がうまれ、大好きな本の形を借りて、宝石のような小さな本が誕生しました。
 仕事として多くの装丁に関わり、商品としての本作りを経験して、小さな本が、大きな本の単なるミニチュアではなく、綿密なレイアウトで作られるべきものと思いました。 
 手書きで作ったはじめての本から、その芯にあるのは、典雅で普遍的な古語のしらべであり、詩のリズムでした。
 本の内容としてのテキストや絵は、あらゆる流行には無縁で、むしろ花翳にひっそりと咲いているようなものばかりを選んできました。
 現代はかつてなかったような多様な素材があふれています。アンティークの品々に触れる機会も多く、時を超えてなお残っている本物の美しさに、古典文学に通じるものを感じとるようになりました。
「金メッキのような作家が多いなかにあって、純金の作家」と佐藤春夫は評されています。若き日に自分にとっての「純金の作家」ともいえる方々に彗星のようにめぐり会えたのは、天からの贈り物だったのかもしれません。 
 次に作りたい本を考えながら、この贈り物の尊さを、いつも心に刻んでいます。


*写真は、ケイト・グリーナウェイの変型六角カップの上のリボンの本
『OLD-FASHIONED RIBBN ART』三角ビーズとパールビーズとクリップで本体を綴じ、
幅広リボンで作られたサッシュやクッションの銅版画が収められています。
   
何十年もの想いの込められた『本の夢 小さな夢の本』
芸術新聞社より、6月25日発売です。
ISBN978-4-87586-450-9 C0070 定価:本体2200円+税

芸術新聞社アートアクセス http://www.gei-shin.co.jp/books/ISBN978-4-87586-450-9.html
amazon   http://www.amazon.co.jp/本の夢-小さな夢の本-田中淑恵/dp/4875864507