ビロードのような毛脚があるロココ調の椅子が、整然と船室のように並んでいた。浮き出し模様の深紅の布貼りだった。狭い店によくあるように、片側が鏡になっている。 神保町すずらん通りにあった喫茶店「SUB ROSA」。高校生の頃買った、上製丸背で葉書よりも…
香山滋が1971年(昭和46年)に書いた「ガブラ一一海は狂っている」(『妖蝶記』所収/創元推理文庫)という小説がある。 太平洋沿岸の漁村、八幡浜。浜の漁師の兄弟が、海洋学研究所所長で学者の塚本博士の高台の邸宅を訪れる。手にした写真は、沖合で撮った…
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