ジャック・プレヴェール脚本『やぶにらみの暴君』

ジャック・プレヴェール脚本『やぶにらみの暴君』

 1952年に邦題『やぶにらみの暴君』としてアニメーション公開。原作はハンス・クリスチャン・アンデルセンの「羊飼い娘と煙突掃除人」。監督のポール・グリモーは、1967年に『王と鳥』として改作。この映画に影響を受けたのが、スタジオジブリ宮崎駿高畑勲で、2006年に同スタジオなどにより、ミニシアターで劇場公開された。
 砂漠の真ん中に聳え立つ孤城に、ひとりの王が住んでいた。その名はシャルル16世。わがままで疑心暗鬼の王は、手元のスイッチ一つで、気に障る臣下を次々に「粛清」していった。

 望みさえすれば、何でも手に入れることが出来るはずの王シャルルは、ひとりの美しい羊飼い娘に片思いをしている。城の1999階(『王と鳥』では267階)の王様の秘密の部屋の壁に掛かった一枚の絵の中にその娘はいて、隣合わせた額縁の中の煙突掃除屋の青年と深く愛し合っていた。嫉妬に狂う王を後に、ふたりは絵の中から抜け出し、一羽のふしぎな鳥の助けを借り、どこまでも続く階段を駆け下りて城からの脱出を試みる。鳥は娘と青年に「気をつけたまえ。この国は今こそ、罠だらけだからな」と言う。
 為政者も、マスコミも、民衆も皆一緒くたになって天空高く聳える高層宮殿の正体は、世界のシステムそのものだった。
写真は『王と鳥』より。



◉「現代詩手帖」1972年7月号にプレヴェールの脚本掲載
◉ 2007年に『王と鳥』DVD 発売
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10271957