オートマタの悦楽とセーラ・クルーの「最後の人形

オートマタの悦楽とセーラ・クルーの「最後の人形」

 オートマタ(Automata ギリシャ語の「一人で勝手に動くもの」が語源)は、主に18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで作られた機械人形ないしは自動人形のこと。ゼンマイを巻いて動くからくり人形。
 動かないビスクドールは、アーテーの小さめのレプリカを一体持っていたが、うっかり落として首が折れてしまった。縁起が悪いので箱に入れてずっと仕舞ったままだった。レプリカを制作しているセサミブレインズさんに相談すると、修理可能ということ。お願いしたら、ほとんど傷がわからない状態で戻ってきた。
 そのセサミブレインズさん制作のジュモーのオートマタを入手。人形は旦那様が、奥様が衣装を作っている。かつて目白の「オルゴールの小さな博物館」で、お茶とピアノの演奏付きで、花綱を持って踊ったり、文字を書いたりするオートマタを何体も動かして見せていただいたことがある。入手したのはもちろんレプリカだが、「エリーゼのために」の音色とともに花の香りを嗅ぐ人形の動きを見ていると、オートマタが手に入るとは夢にも思わなかっただけに、今年は幸先がよいかも、と勝手に思ってみる。





 人形と言えば、思い浮かぶのは『小公女』の主人公セーラの11歳の誕生日に、父親のクルー大尉から贈られた「最後の人形」。セーラは裕福な家庭の子で、ミンチン女学院の寄宿舎では公女様のように扱われている。父親に買ってもらったエミリーという人形を持っているが、誕生日の人形は小さな子どもほどもあり、トランクの鍵を開けると、次々と美しい衣装や小物があらわれた。ダンスの会の服、訪問用の服、散歩服、テンの毛皮の外套やマッフ、レースの襟飾りや、絹の靴下、ハンカチ、首飾りから、黒ビロードの帽子、扇子まで、何から何まで見事な品がそろっていた。
 その誕生会の最中にクルー大尉の訃報が届き、皮肉なことに、それはセーラにとって本当の「最後の人形」になってしまった。一文無しになったセーラは、意地悪なミンチン先生に屋根裏部屋に追いやられ、下働きに使われるが、どれほど耐えがたい日々にも、決して心の気高さを失うことはなかった。

 赤いトランクと人形の写真は、神戸ドールミュージアム
 屋根裏部屋のセーラの挿絵は、2011年の福音館書店版。画家はエセル・フランクリン・ベッツ。